2024 7.17 wed., 7.18 thu., 7.19 fri.
JAZZMEIA HORN
artist JAZZMEIA HORN
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
ささやきからシャウトまでを縦横無尽に行き来する発声、大胆不敵なスキャット、驚嘆すべき声域の幅広さ、猛烈なドライヴ感、あふれるエンタテインメント性、抜群のファッション・センス・・・・ジャズメイア・ホーンのライヴ・ステージには、"魅せる"という言葉がぴったりです。3度のグラミー賞ノミネートを誇り、権威ある"サラ・ヴォーン国際ジャズ・ヴォーカル・コンペティション"の第2回ウィナーでもある(その後、サマラ・ジョイ、ガブリエル・カヴァッサなどが続きました)彼女が、遂に「ブルーノート東京」初登場、昨日から会心の公演を繰り広げています。
共演はウィリアム・ヒルIII(ピアノ)、エイダン・マッカーシー(ベース)、グレゴリー・アートリー(ドラムス)という精鋭たち。今後、どんどん知名度をあげていくであろうライジング・スター揃いであることは、プレイを耳にすれば明らかです。ヒルはオスカー・ピーターソン、エロール・ガーナー、レッド・ガーランド等を敬愛するピアニストにあげて、「彼らのように、自分自身のヴォイスを、魂をこめて、即興的にピアノから引き出すこと」を目標としています。きらめくような単音から瞬時にブロック・コードに移るかと思えば、内部奏法も巧みに使い、時に体を揺らしながらスウィングするプレイに接して、私は「爽快なジャズ・ピアノを満喫した」という気持ちに包まれました。師匠ジョン・クレイトンゆずりの美しいイントネーションを持つマッカーシーは、SFジャズ・ハイスクール・オールスターズ・ビッグバンドに在籍したことがある奏者。堅実でありながら、聴いていてわくわくするようなベース・ラインを聴かせてくれます。シカゴを拠点とするアートリーは、音楽する喜びを全身から発散するように演奏するドラマー。YouTubeにおける、グレッグ・ウォード(2023年にマカヤ・マクレイヴンと来日)とのデュオ・パフォーマンス「Jazz Postcards: Greg Artry Greg Ward」に感銘を受けていた私は、至近距離で繰り広げられる技の数々に聴きほれるばかりでした。
ステージはジャズメイア・ホーンの自作「Tip」から始まりました。四者一体となってドライヴするとは、まさにこのことでしょう。歌/伴奏の垣根を吹っ飛ばすような統合感です。ホーンの歌いっぷりにも、もはや歌詞/スキャットの境がないように思えました。スキャットのひとつの方法に、管楽器的なフレーズを、管楽器を模したような人声で表現する手段がありますが(よく「ホーンライク」という言葉で形容されます)、彼女のアプローチはそれを飛び越えて、大自然、動物、さらにはコズミックなものまでとの一体化を図っているように聴こえてきます。ビリー・ホリデイやヘレン・メリルも歌った古典的スタンダード・ナンバー「Willow Weep for Me」も、このメンバーにかかると、「Footprints」的ブルース感覚や「Afro Blue」的エキゾチズムが加わって、ひとつの壮大なマッシュアップのようです。内部奏法で2コーラスものアドリブ・ソロを弾ききったヒル、意図的にヒルが手を休めたパートで限りなくメロディアスなフレーズを紡ぎ出して歌と絡んだマッカーシー、スティックやブラッシュを使わず両手で直にプレイするアートリーのドラミングも実に見事でした。
ラストに演じられたのは、ホーンがこよなく敬愛するベティ・カーターの定番曲「Tight」。偉大なるベティ・"ビバップ"・カーターのレガシーは現在、確実に、ジャズメイア・ホーンに受け継がれ、アップデイトされているといっていいでしょう。"興奮の余韻"をしたたかに残す来日公演は、19日まで続きます。
(原田 2024 7.18)
Photo by Takuo Sato
【LIVE INFORMATION】
2024 7.17 WED.
1st | |
---|---|
1. | Tip |
2. | Free Your Mind |
3. | Willow Weep For Me |
4. | Our Love Is Here To Stay |
5. | Darn That Dream |
6. | When I Say |
EC. | Tight |
2nd | |
1. | Tip |
2. | Submit To The Unknown |
3. | Our Love Is Here To Stay |
4. | Darn That Dream |
5. | When I Say |
6. | Free Your Mind |
EC. | Tight |